世界中の新型コロナウイルスの状況とは裏腹に、日本はすっかり落ち着き、このまま無事に年末年始を迎えられそうな雰囲気があります。「時短営業だ」「酒類の提供禁止だ」と長く苦しんできた飲食店にも、なんとか忘年会シーズンが来そうです。
ニュース報道などでは多くの会社が忘年会を開く計画がないと言っていますが、去年とは違い、忘年会予約がまったくないという雰囲気はありません。
こうなると大きな問題となるのが人手不足。長い間、時間短縮営業、または休業を余儀なくされた飲食店にとって、人材育成は急務な問題です。この記事では、人手不足と人材育成の問題を解決する策を探っていきます。
2021年の忘年会予想
東京では9月になると新型コロナが急速に収まりはじめ、10月25日からは時短要請が解除されました。
それに伴い、多くの人が外に出はじめ、街には活気が戻りつつあります。特に東京や大阪といった大都市圏の時短要請が解除されたことで、「通常への第一歩」と捉えられました。
ニュースなどの報道では、会社として忘年会をしないという企業が多いようです。確かに大規模な忘年会を開くのは企業であり、対外的な悪印象にも直結するため、そういった企業は多いでしょう。
しかし実際に飲食店の話を聞いてみると、「部署単位の10人以下の忘年会や、プライベートな仲間との忘年会は増えてきた」というところが多いようです。
特にプライベートの飲み会はこれまで憚られていました。仲間の中に、「勤務先から3人以上の飲み会に参加してはいけないと言われた」などというルールがある人がいると、何となく開催しにくい雰囲気となっていたわけです。
しかし、さすがにその制限はなくなり、それがプライベートな忘年会の多さを支えているようです。
売り上げ確保の最大の問題は人不足
こうなると店舗は、大勢のお客が来ても問題なく”回せる”状態にしなければなりません。そこで最大の問題となるのは人手不足。飲食店はコロナ以前にも人手不足に悩んでいました。なぜなら、飲食店では接客も調理も、主な戦力だったのはアルバイト。流動的で、気軽に辞められる存在であったため、簡単に人手不足になっていたわけです。
そんな中、新型コロナで時短営業となり、正規雇用の社員の雇用を守るのがやっと。アルバイトはクビにした、あるいは自然に消えていったというところがほとんどだと思います。
その中の何人かは戻ってきたかもしれません。しかし、多くの飲
それでも、調理を担当するアルバイトの場合、愛想が悪くても、多少作業が遅くても、フォローし合うことでなんとか回すことができます。
しかし接客のアルバイトの場合はそうはいきません。
こちらは注文を正確に聞き、商品を間違わずにサーブするという役割だけでなく、接客という大きな役割を担います。
つまり、正確にミスなく注文が聞けても無愛想であれば、「笑顔のない店だ」と思われますし、乱雑なサーブの仕方であれば、「接客がなってない」という印象を与えるのです。
しかも、アルバイトがお客と接するシーンに、いちいち社員が立ち会うわけにはいきません。多くの飲食店では基本的なことを教えたら、「分からないことがあったら聞いていいから、とりあえずやってみよう」というシーンが多いようです。
こうなるとアルバイトも緊張しますし、ミスも増えます。またミスが増えてくるとベテランの人たちも余裕がなくなり、殺伐とした雰囲気となり、さらに接客レベルは悪化。それによりまたミスが増えるという悪循環に陥り、アルバイトが育たない状況になってしまいます。
多くの飲食店が実施しているアルバイト育成の間違った方法
筆者はさまざまな企業の人材育成やマニュアル作成を手伝った経験があるのですが、飲食店には特徴的なことがあると感じています。
それは、初めて入店した1時間後には、もう接客をさせているところが非常に多いこと。もちろんチェーン店などでは動画学習やオリエンテーションなどがあるのですが、一般的な店舗で行っているアルバイト教育は、現場でいきなり実地訓練となっているのです。
例えば、店舗で扱うメニューはメニュー表を見せた程度、オーダー票の書き方は、「とりあえず、分かるように書けばいい」、その上で「分からないことがあったらすぐに聞いて」といった程度で接客を担当させるのです。
しかしその一方で、飲食店は学生のアルバイト先、または主婦のパート先として非常に身近な存在です。そのためアルバイトが初めてとか、接客業が初めてという人が多く入ってきます。こうなると、うまい対応はできません。
接客業経験者も、アルバイトが初めてという人も同じように簡単な教育しかできない店舗が多いのも現状のようで、「これが居心地の悪さにつながり、人出不足の一因となっている」と言う飲食店経営者も多くいます。
人手不足を乗り切る3つの方法
とは言え、忙しい飲食店。かきいれ時目前で、時間をかけた人材育成をするのは難しいのが現状です。
これまで通りにやるしかないと考えてる方もいるかもしれませんが、以前の新人教育が成り行きまかせでも何とかなっていたのは、新人が少なく、多くのベテランがフォローしていたから。しかし今年は、少し事情が違います。多くの人が新人であり、フォローできない可能性があるのです。
では、このような状況で、どうすればミスがなく、なおかつスムーズに回るようにできるのでしょうか。
そこには3つのポイントがあると考えます。
それは以下です。
● 自分で学べるマニュアルの整備
● 負担を下げるモバイルオーダーなどのシステム投入
● フォローする側の体制を整える
一つずつ説明していきます。
自分で学べるマニュアルの整備
アルバイトを管理する側の意見として、「アルバイトが自ら学ぶはずがない」と言う人がいます。なぜそのようなことを言うのだろうと考えてしまいます。もしかすると、その管理者側がアルバイトだったこと、そういう習慣がなかったのかもしれません。
実際には、アルバイトという立場でも、学びたいと思っている人は多くいます。理由は、早く役に立ちたいというものもあれば、単に怒られたくないという場合もありますが、どちらにしても学びたいという気持ちを持っていることに違いはありません。
しかし、誰かに時間をとってもらわなければならないのでは、この学びは進みません。そこで、マニュアルなどを整備することが重要となるわけです。
それなら、例えばメニューを覚えてもらいたいので、あればお客が見るメニュー表を休憩室に置いておくだけでも効果はあります。また機器類の扱いなら、使っている様子をスマホなどで撮影するのもよいでしょう。
今はスマホさえあれば動画撮影ができますし、お金をかけたくなければ Googleアカウントを取得すれば、無料でもかなりの量のファイルを共有することができます。
このようにすれば、アルバイトの戦力化スピードは格段にアップします。
負担を下げるモバイルオーダーなどのシステム投入
接客担当のアルバイトの愛想が悪くなる最大の理由は、緊張と焦りです。「間違えてはいけない」とか、「どうすればいいのか分からない」と思いながら作業をすることで緊張し、焦ることで余裕がなくなり、笑顔どころではないのです。
これをクリアするには、アルバイトがミスをするような作業、またはややこしい作業を減らすのが一番です。
iPadなどのタブレットを各テーブルに設置するシステムもありますが、こちらは設備費が必要ですし、管理も大変です。モバイルオーダーであればこれらの負担がなくなるため、導入する店舗が増えています。
またモバイルオーダーシステムは衛生面から、お客側の支持も高くなっています。自分のスマホを触るだけなので抵抗感はありません。またスマホは使え慣れたガジェットであり、多くのお客が問題なく扱えます。
「高齢者には使えない」と決めつける人もいますが、最近は高齢者でもファミレスなどを利用しており、「ここはタブレットで注文する店」「この店はスマホでも注文ができる」と自慢気にオーダーする姿もよく見られます。
もちろん使えない方にはスタッフがフォローする必要がありますが、このようなシステムを使うことでアルバイトの負担は大幅に減り、その余裕がホスピタリティの向上につながります。ぜひ積極的に導入していただきたいものです。
フォローする側の体制を整える
問題は現場で起こるもの。フォローする側が余裕をもって対応できるような体制をとっておくことが大切です。そして新人には、「何かがあったらこの人に聞けば何とかしてくれる」と明確に伝えるだけでも安心してチャレンジができます。
繰り返しますが、大切なのはフォローする側の体制。このことを忘れないようにしてください。
まとめ
新型コロナウイルスの影響も収まり、昨年よりも期待できる忘年会シーズン。会社単位での件数が減る分、部署単位で、あるいは仲間内とやる忘年会は増加するようです。
飲食店としては、これまで減らしていたアルバイト人員を増強し、一刻も早く戦力化する必要があります。そのために店舗ができることに全力を傾け、大きな売り上げを確保できるようにしてください。
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