飲食店経営が難しい5つの理由と、つぶれる店・勝ち残る店の違いとは?

飲食店経営をしたことがない人は、「お洒落なカフェをはじめたい」とか、「退職金で定食屋をやりたい」などと言います。しかし、飲食店経営に関わった人は、そう簡単な業種ではないことはお分かりでしょう。しかし、どこに難しさがあり、どうやればその点をクリアできるのかは意外と分からない方も多いもの。今回は、なぜ飲食店経営が難しいのかを再確認した後、つぶれる店と勝ち残る店の違いを解説します。

飲食店ははじめる人も、つぶす人も多い業種

まずは、客観的なデータを紹介します。

これは、中小企業庁が発表した、令和2年度(2020年度)の小規模事業者の動向についてのデータです。この中に、「業種別開廃業率」と言うものがあります。

 

このデータを見れば、開業率、廃業率ともに、もっとも高いのが「宿泊業・飲食サービス業」となっています(開業率8.8%、廃業率6.2%) これが意味するのは、開業しやすいけれど、廃業するリスクも高いということです。 

 

飲食店経営が難しい5つの理由

では、なぜ飲食店の経営は難しいのでしょうか?主な理由としては、以下の5つが考えらます。

1.開業時に多額のコストが必要

飲食店を開業するには、物件を借りて、厨房と客席を作らなければなりません。物件取得費は、場所によっては数百万~1千万円を超えることも珍しくありません。

これを払った後、厨房と客席を作るのですが、厨房は保健所のルールを守る必要があります。また、客席は雰囲気に関わる重要な部分なので、何でもよいとはいきません。必然的にコストがかかります。 

さらに、皿などの備品を揃え、ホームページを作成し、スタッフのユニフォームを揃え…と初期コストが必要なものばかりです。  

2.毎月、多額なコストが必要で利益率が低い

初期費用を用意し開店できたとしても、次は毎月の費用が高いことが問題となります。 

飲食店は粗利が高いと言われますが、利益率は決して高くはありません。特に近年はさまざまな食材が値上がりしていますし、人件費の高騰は目を覆いたくなるほどです。 

さらに飲食店は固定費が発生します。これは家賃など、売り上げとは関係なく毎月発生するもの。この影響で、売り上げが下がると途端に赤字になってしまいます。 

3.外的要因で売り上げが変動する

一定以上の売り上げを確保するために、オーナーは日々努力をするわけですが、飲食店は外的要因の影響を受けやすい業種であることも経営を難しくします。 

外的要因の代表は天候。台風や大雪もそうですが、少し雨が降っただけとか、中には気温が低いというだけで客足が激減する店舗もあります。 

また、流行にも左右されやすいのも特徴です。最近の例で言えば、長蛇の列を作っていたタピオカミルクティ。人気はかなり落ち着き、本物の店だけしか残らなくなっています。 

またラーメン屋も流行に左右されやすいと言われ、連日行列ができるほどだからと店舗を移転したら流行が終わり、客席が埋まらないケースも珍しくありません。 

さらに、テレビで紹介されたなどの理由で、突発的に売り上げがあがることもあります。しかし、熱が冷めると来客は突然減少。食材が大量にあまることになるなど、食材管理も難しくなります。 

4.ライバルが多い 

飲食店は経営が難しいのですが、その一方で成功している人も多くいて、周りを見渡せば優秀なライバル店がたくさんあります。

例えば、努力を重ね、限界まで安くしているのに、それ以上に安い店が近くにオープンすることがあります。調べてみると、自己物件に出店していて家賃負担がなかったり、精肉店が肉を安く仕入れてステーキ屋をはじめたり。こうなると価格では太刀打ちできません。 

5.人気店になる要素が明確でない 

飲食業をやったことがない人がよく言うのは、「料理が趣味なんだ」とか、「うちの奥さんが焼くパンがうまい」ということ。つまり、「美味しい料理さえ出していれば、お客さんは来るものだ」と思っているのです。  

しかし飲食店は、それだけで集客できるほど簡単ではないことは、多くの飲食店経営者は分かっていること。店の立地やコンセプト、メニュー構成、価格を吟味した上で、さらに集客をしなければお客さんは来ません。 

実際、行列のできるラーメン屋と閑散としたラーメン屋。この二つを比較して味に遜色がないケースは決して少なくありません。まずいラーメンを出しているのならば人気が出ないのは当然ですが、美味しいラーメンを出していても人気が出るとは限らない。この難しさが飲食店なのです。 

 

それでも飲食店経営は魅力的 

これまで飲食店経営の難しさを紹介してきましたが、これらをクリアした先に飲食店経営で成功するという大きな特典が待っているわけです。それは経済的にも精神的にも豊かになれるもの。

実際飲食店は、お客様に直接関わる商売であり、「食」と言う人に欠かせないものを提供し、感謝されると言う、他にはない魅力的なビジネスです。当然ながら、全ての飲食店開業者は成功を夢見ているわけで、望んでつぶれていくわけではありません。 

 

では、なぜ成功できるのか。 

 

ここからは、勝ち残っていける店と、潰れる店の違いについて考えていきます。 

 

勝ち残る店に共通していること 

さまざまな要因が絡み合ってやっと成功できるのが飲食店です。では、成功する店にあって、つぶれる店にないものは何でしょうか? 

 

ここでは5つのポイントに絞って深掘りしていきます。 

 

ターゲットを明確に絞り込んでいる 

つぶれる飲食店はターゲットを絞り込んでいないことが多くあります。中には、開業した当初は絞り込んでいたのに、目先のお客が欲しいためにだんだんと緩くなってしまい、結局は当初のターゲットまでもが利用しにくい店になっていることが多くあります。

例えば、くつろげるソファー席でゆっくりと高級なコーヒーを飲んでもらえる大人の店というコンセプトなのに、店の前を通る親子連れを取り込みたいと、子供向けのメニューを作ることがあります。店は高級感があるので、それほど多くの子連れが来るわけではありませんが、それでもゆっくりとコーヒーを飲みたいというお客には違和感となり、足が遠のきます。 

ターゲットが違えば、何を求めるかも違うはず。ファミレスや大衆居酒屋でない限り、来客が少なかったとしても、ターゲットは深掘りしていくものであり、広げるものではありません。 

またターゲットを変えるときは、小手先だけで変えるのではなく、コンセプトから大胆に変える必要があります。 

利益を出せる構造になっている 

どんなに素晴らしい店で、美味しい料理を、感心するような価格帯で出したとしても、収支バランスが悪くては、利益は見込めません 

誤解している方も多いですが、オーナーが儲けたい場合、必ずしも大型店舗が必要というわけではありません。 

例えば、ターミナル駅の駅近物件は物件取得費が高いのはもちろん、家賃などの固定費も非常に高いのは想像がつくでしょう。これに加え、たくさんの人をさばくには従業員も多く必要です。 

こうなると人件費率が高くなるのはもちろん、アルバイトには常に新人がいることになります。教育期間は新人アルバイトとベテランの2人で1人分の働きしかできず、当然、人件費がかさみます。 

また、常に新規客を集める必要があるので、集客もコストをかけることになります。大型店は売上も多いかもしれませんが、同時に経営コストも高くなり、利益は出にくくなるわけです。 

その一方、2等、3等地で物件を安く借り、少人数で効率よく回せる店舗を作り、感心するほどの利益を得ているオーナーもいます。オーナーの元にお金が残れば、店は長く続けられ、増やすこともできます。この辺りは発想の転換なのかもしれません。 

ターゲット顧客にあった、利益の出るメニューにする  

飲食店では調理経験者が店舗を開業するケースも多く、料理に力を入れている店が多くあります。ターゲットのことを考え、「美味しい」「お値打ち価格だね」という商品を目指しているわけです。これ自体は素晴らしいこと。 

しかし、「利益を出せるか?」という観点で見れば厳しいところが多いのも実情です。 

例えば、生鮮食品をふんだんに使う店の場合、タイムオーバーによる食材ロスが増えます。その生鮮食品を別の用途に使えると言うのであれば問題はいくらか回避されます。ですがそれができていない店舗が多いのです。 

以前、筆者がインタビューをした店では、「刺身に使うマグロと煮込みに使うマグロは同じではない」と言い切るオーナーシェフがいました。それは正しいのですが、だからといって食材を捨てたのでは経営が立ちゆかなくなります。 

刺身に適した食材と煮込みに適した食材は違うのかもしれませんが、それでも美味しい料理に変えて提供するのが料理人の腕であり、経営者が選択するべきこと。ここを間違ってはいけません。 

高騰する食材仕入れでも飲食店の原価率を上げない方法とは

高騰する人件費とサービスのあり方を考えている 

以前から飲食店における人件費の重要性は叫ばれていました。飲食店はサービス業ですから、そこを軽んじるわけにはいきません。 

しかし近年は人件費が高騰しており、お客を満足させながら、人件費を最小限に抑えることが不可欠になっています。多くの店では、10年前と同じような人の使い方をしていれば確実に赤字になります 

飲食店の経営数値はパーセンテージで見ることが一般的です。また飲食店はコンサルタントが多い業種ですが、彼らが店に行き経営数値を見る時、20年前までは「まず原価率を見る」という考え方が一般的でした。 

しかし徐々に人件費が上がった結果、「FL比率を見ろ」と言われるようになります。FL比率とは、売上高に占める「F=食材費」と「L=人件費」のことです。 

そして現在、FL比率でみること自体は変わっていませんが、「○%以上だったら使いすぎ」のような画一的な数字は当てはまらなくなっています。その分、飲食店経営は難しくなったと言うことです。 

飲食店で重要なFLコストとは?その考え方と適正値の算出のための3つの視点

これからも人件費は確実に上がっていきますので、できるだけ早期に対策が必要と言うわけです。 

ではどうするか。 

幸いお客側の感覚も変わり、従来のスタッフに注文するのと、モバイルオーダーや据え置きのタブレットでの注文では、後者の方がよいという人が増えています。少ない店員を大声で呼んで焦って注文するより、あれこれじっくり検討しながらゆっくりと注文する方が楽しいと言うことです。 

モバイルオーダーであればシステム料は必要ですが、客席に設置するデバイスを用意する必要はありません。それらを踏まえ、人件費と比較した結果、IT化を選択する店舗が増えているのです。  

販売促進は必要でも、コストはかけすぎない  

飲食店経営では販売促進は欠かせないものです。どんなによい商品を出しても、店内の雰囲気が素晴らしくても、お客に認知されなければ意味がないからです。 

しかし前述のように人件費が高騰している今、お金をかけた販売促進はできません。その一方で、SNSなどを使えばローコストで集客につながることもあります 

SNS の活用については、その重要性が叫ばれていても、なかなかうまく活用できている所はありません。しかしノウハウはたくさんあります。是非これを学び、活用して頂ければと思います。 

SNS活用できていない飲食店が知っておくべき10のコツ

まとめ  

飲食店経営は決して簡単ではありませんが、やりがいもあり、楽しいものでもあり、そして成功している人も多い業種です。 

これから開業しようと考えている人はもちろん、すでに開業している人も、ターゲット選定やメニュー開発、販促活動を戦略的に行い、経営数値を改善するように努めていただければと思います。どの店にも、勝てる条件はあるはずです。