多店舗展開するならどっち? チェーン店には直営かFCか。出店スピードと収益面から考える

店舗を増やそうとするとき、多くの人は直営方式(経営者が資金を準備し、自ら店舗運営をする方法)を選択するでしょう。しかし、これでは資金力に限界があります。もちろん、融資を受けながらマイペースに多他店舗化するのであればこの方法で十分ですが、加速的に出店を増やしたいのであれば、フランチャイズ(FC)展開するという選択もあります。
今回は、直営とFCはどういった違いがあるのかを比較してみたいと思います。

 

 

飲食店は、借り入れをしてスタートすることが多い

ほとんどの人(会社)は1店舗目を始めるとき、自分(自社)の資金で店舗を取得し、内装を整え、従業員を雇ってスタートします。このときの1店舗あたりの出店費用は数百万円から数千万円と差がありますが、どちらにしても安い金額とは言えず、多くの人(会社)は、銀行などから借り入れをして出店資金に充当することとなります。

そして、その店舗が軌道に乗れば多店舗展開を考えることとなるのですが、ここでも、ほとんどの人は借り入れをする必要があります。これは、2店舗目に限らず、3店舗目、4店舗目もほぼ同じ。つまり、ほとんどのケースが、融資を受けることで資金調達していることになります。


じっくり増やす直営店方式か、スピードアップできるFC方式かの選択

さて、店舗を増やしてくと、借入総額や企業規模の面から、いずれかのタイミングで融資を受けることが難しくなります。より多くの借り入れをすることに躊躇することもあれば、融資が下りなくなるケースもあるでしょう。どちらにしても、成長が鈍化してしまいます。1店舗あたりの規模にもよりますが、多くは4店舗目、5店舗目を出したあたりから出店ペースが鈍り、次を出しにくくなると言われています。

そうなったとき、一度出店のペースダウンをし、基礎部分を盤石にしてから自力で拡大をする直営方式か、または、スピードを重視したフランチャイズ(FC)方式を選択するかを考えるタイミングがきます。

この店舗拡大方法は、お客の立場から見れば変わりはありませんが、経営する側から見ると、ビジネスモデルからして違うもの。そのため、選択を誤ると取り返しのつかないことになってしまいます。

直営方式とFC方式の違い

直営方式とFC方式は、どちらにもメリット、デメリットがあります。まずは直営店と方式とフランチャイズ方の違いを見ていきましょう。それを図表にしたのが以下です。

オープン資金

オープン資金については、直営方式のときは自分たちで調達します。自己資金に加え、借り入れ資金も自分たちで行う必要があります。つまり、売上げを上げるために多店舗展開すれば、それだけ借金も増えることになり、規模によって借入限度があるため、出店したくてもできなくなるのです。

一方、FC方式の場合、出店にかかる費用は加盟店が独自に準備します。借り入れも、オーナーが独自に行うため、本部が負担をする必要はありません。このため、(加盟希望者がいれば)加速的な出店が可能になるということです。

オペレーションについて

直営方式の場合、自分たちが雇用した人がオペレーションを担当します。これは、店長もアルバイトも同じこと。そのため店舗が増えれば、会社としての規模も大きくなっていきます。一方、FCの場合、オペレーションを行うのは加盟店のオーナーや加盟店が雇った人材。店舗が増えるからといって、人を増やす必要はありません。

直営方式の場合は、オーナーが自分自身でアルバイト育成をし、営業方針などを伝えることができますが、FC方式の場合は難しくなります。経営はあくまでも加盟店が行うため、独自ルールや営業方針を加えることとなり、店舗による違いやレベルの差がでてしまうのです。また、採用も加盟店が行うため、ときには時給などの問題から望むレベルの人が集まらない可能性もあります。

そのため、全店を一定レベルに引き上げたり、統一事項まで自由裁量で変更してしまったりすることがないよう、監視と指導をする人材を本部に置く必要があります。これをスーパーバイザーなどとよびますが、自社内の人を指導するのと、加盟店の人を指導するのとでは、意味合いが違ってきます

ノウハウの確立

直営方式の場合、オペレーションはやりながら決めていけばよく、臨機応変な変更も可能です。ところが、FC方式の場合、そのノウハウの提供も含めて加盟してもらっているのですから、ある程度、確立しておかなければなりません。また、食材の仕込み方などは、ルールがあるから統一感があり、一定レベルのものが提供されるという側面もあります。

とはいえ、FC方式の場合でも、不変のルールを作らなければならないというものではありません。基本的な部分ができていれば、あとは創意工夫で対応してもらうというスタンスの加盟店も多くあります。

販促のやり方

店舗の販売促進を行う場合、直営方式であれば自由裁量であり、特定の店舗だけに集中して行い、あとはまったくやらない・・・などという判断もあります。ところが、FC方式では売上げに対するパーセンテージで「販促費」を徴収しているところが多く、チェーン全体の知名度アップのための販促をしなければなりません。これは、公平に行うことが前提となっています。

なお、多くの加盟店では、全体の販促は徴収した販促費に本部から拠出する費用を充当して行い、各店舗が行う販売促進に関しては各店舗の予算で行うのが一般的です。

利益の出し方

直営方式とFC方式では、利益の出し方がまったく違います。このため、どちらを選択するのか(どちらの比重を大きくするのか)によってビジネスモデルまで変わってしまうのです。

直営方式の場合は、通常の店舗運営と同じく、店舗の売上げから利益を生み出しますが、FC方式の場合、加盟料やロイヤリティから収益を得ます

また、利益を多く確保するために自社内のスタッフに求める能力も違ってきます。直営方式の場合は、店舗の営業とマネジメントができるスキルが必要です。また、店舗を指導するスーパーバイザーとなっても、上司が部下を指導するというスタイルは継続します。

一方、FC方式の場合は、自らオペレーションを行うのではなく、各店のオーナーや店長がオペレーションをスムーズに行えるように指導することが主な役割。そのため、マネジメントを「教える力」が必要となります。また、指導する相手は加盟店の経営者であるため、経営的な見方も必要ですし、トラブルに対応する能力や、各店舗での個性を守りつつ、全体としての統一感も求めるという調整能力や判断能力も重要です。

知名度がなくてもFC展開が可能になっている

「フランチャイズ展開するには、知名度がないと難しいのでは?」
そのように考える方が多くいますが、最近はそうでもないと言えそうです。その理由のひとつに「フリーネーム」とよばれる加盟方式が増えていることが上げられます。

フリーネーム方式は、「加盟店に入ってノウハウは教えてほしいけれど、屋号やメニューには個性を出したい」というニーズに応えるもの。屋号を独自につけられるだけでなく、加盟店だということが分からない店舗もあるほどです。こういった店舗は本部側から見ると、ブランディングに役立ちませんし、店舗拡大という意味からは外れるかもしれません。しかし、オープン後は月に1~2度店舗に行って指導を行うだけで加盟料やロイヤリティがもらえるのですから、収入源のひとつとして考える経営者もいるのです。

また、加盟店としてでも看板を掲げる以上、ブランディングに傷をつけるような行為はしてほしくないもの。その意味でも、フリーネームの加盟制度の方がよいと考えるFC本部もあります。そのため、フリーネームは今後、ますます増えてくる可能性があるのです。

食材卸しによって得る収入が本部にとっての大きな収入源になる

もうひとつ、フランチャイズ本部の収入源として大きな割合を占めるのが、食材や包材の卸しから得るものです。例えば、オリジナル食材をOEMでどこかの工場に作らせる場合、この原価にいくらかのマージンを乗せて店舗に卸します。また、ネーム入りの食器やユニフォームもこれに含まれるでしょう。こうしてできた差額が収入源となるわけです。

これについては、加盟店割合が多いコンビニエンスストアでは、オリジナルブランド製品を含むすべての商品の仕入れを本部経由で行っていますし、ファストフードの加盟店も同じです。

また、加盟時に行う研修も、雇用したスタッフであれば給与や時給を出しながら行いますが、加盟店であれば「研修費」という名目で費用を徴収することができます。また、店舗物件を探したり、設計のチェックを行ったりといったことも、加盟店であれば「加盟料」として最初にまとまった金額を受けとる仕組みができています。このように、「フランチャイズ本部」になると、直営方式とはまったく違った収益が得られるわけです。


多店舗展開のために必要な活動も違う

さて、もうひとつ違う点があります。それが、店舗を増やすために何をすべきか?ということです。

直営方式で店舗を増やすためには、資金調達から物件探し、店舗設計、スタッフトレーニングまで、すべてを行う必要があります。一方、FC方式の場合、店舗作りはあくまでもサポート業務。それ以前に、店舗を増やすためには加盟希望者を増やす必要があります。そのため、ネットなどで「オーナー募集」をする必要がありますし、セミナーを開催し、店舗ツアーを行うことも必要です。

もちろん、FC方式を選択したら直営店を増やしてはいけないということはないため、両方を継続して行っているところが多くあります。ただ、その主流になる方をメインに活動しなければ、結局、店舗が増えることはありません。

また、のれん分け制度を採用しているところもあります。これは、両方のメリットを取り入れたもので、直営方式でオープンし、経営が軌道に乗ったところで加盟店オーナーにその店舗を譲り渡す方式です。これであれば、スピード感をもって多店舗展開できますし、オープン間もなくクローズしてしまう店舗も少なく、双方にメリットが多い方法だと言えるでしょう。

まとめ

一見すると同じように見える多店舗展開も、実はいろいろな方法があります。必要な資金や調達方法が違い、収益モデルも違ってくるため、スタッフに求められるスキルも違ってきます。店舗の将来性を考えチェーン店化しようと考えたとき、どのような将来像をもち、どちらの方法を主軸として展開していくのか。十分に考えた上で事業展開をしていくようにしてください。


 

ライタープロフィール
原田 園子

兵庫県出身。  株式会社モスフードサービス、「月刊起業塾」「わたしのきれい」編集長を経てフリーライター、WEBディレクターとして活動中。


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