アメリカのグルテンフリー食品市場が2026年までに114億ドル規模へ成長

アメリカでグルテンフリー食品市場が拡大している。市場調査会社リサーチ・アンド・マーケットによると、2020年時点で64億ドル(約8320億円)規模だったアメリカのグルテンフリー食品市場は、今後年率10.1%の成長率で拡大を続け、2026年までに114億ドル(約1兆4820億円)規模に達するという。市場の拡大にともない、グルテンフリーフードを提供する飲食店も増加している。グルテンフリー食品とは何か、市場拡大の背景などとともに解説する。

グルテンフリー食品とは何か?

グルテンフリー食品とは、文字通りグルテンを含まない食品のことである。では、グルテンとは何だろうか。グルテン(Gluten)は、小麦、大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質で、グルテニンとグリアジンが絡み合ってできたものだ。両者が結びついて粘着性を帯びる性質を利用してパン、ピザ、パスタなどを作るというわけだ。

グルテンが多く含まれる食品は、小麦粉を使った代表的な食品であるパンやパスタなどを筆頭に、ラーメン、うどん、そうめん、焼きそば、お好み焼き、天ぷら、ケーキ、クッキーなどが挙げられる。我々が日常多く口にする食品の多くにグルテンが含まれている。

なお、一般的にグルテンを含む食品を摂取しない食生活をグルテンフリーダイエットと言う。そして、現在アメリカやヨーロッパ主要国で、このグルテンフリー・ダイエットを実践する人が増加しているのだ。

グルテンフリー・ダイエット実践者増加の背景

では、なぜ欧米を中心にグルテンフリー・ダイエットを実践する人が増加しているのだろうか。その理由の第一はセリアック病患者の存在だ。セリアック病は遺伝性の疾患で、グルテンに異常反応して自己免疫系が小腸の組織を攻撃して炎症を起こすものだ。セリアック病の患者がグルテンを摂取すると、腹痛や下痢などの症状を起こしてしまう。アメリカでは、人口の1%がこのセリアック病を患っているとされている。

また、小麦粉アレルギーを患っている人の多くもグルテンフリー・ダイエットを実践している。小麦粉アレルギーを患っている人もグルテンを摂取すると腹痛や下痢、倦怠感や眠気などの症状を起こすとされる。アメリカでは、人口の0.5%が小麦粉アレルギーを患っているとされる。

なお、セリアック病や小麦粉アレルギーを患っていない人でもグルテンフリー・ダイエットを実践する人が増えている。グルテンフリー・ダイエットでパフォーマンスを出したというアスリートに触発された人や、グルテンフリー・ダイエットにより体質が改善したという人、または美容上の効能やダイエット効果を期待して実践している人など、様々な理由からグルテンフリー・ダイエットを実践する人が増えている。

グルテンフリー食品の例

では、グルテンフリー食品として、一般的にどのようなものが販売されているのだろうか。

アメリカのグルテンフリー食品専門ECサイト「グルテンフリーモール」を見てみると、想像以上の種類のグルテンフリー食品が販売されている。グルテンフリーのパンやピザをはじめ、グルテンフリーのベーグル、クロワッサン、ハンバーガー用バン、プレッツェル、各種のパスタ、トルティーヤ等々だ。なお、グルテンフリーのパンは米粉、そば粉、大豆、コーンスターチなどを使って作られている。また、グルテンフリーのパスタはトウモロコシ粉を使って作られている。

日本でもグルテンフリーのパンをはじめ、米で作ったパスタ、ビーフン、ラーメン、ライスペーパー、パンケーキミックス、シフォンケーキなどの様々な種類が販売されている。米が主食の日本では、米を使ったグルテンフリー食品が多く売られているようだ。

グルテンフリーレストラン紹介①「センザ・グルテン」

また、飲食店でもグルテンフリーフードを提供する店が増えている。ニューヨークのイタリアンレストラン「センザ・グルテン」(Senza Gluten)は、「ニューヨーク・グリニッジヴィレッジで最初の完全グルテンフリーのイタリアンレストラン」を標ぼうしている。

メニューは普通のイタリアンレストランとまったく変わらず、スープ、サラダ、アンティパスト、ラビオリ、各種のパスタなど、本格的なイタリア料理を楽しめる。デザート類も充実していて、セリアック病や小麦粉アレルギーに苦しむ人にとっては夢のような店だろう。口コミサイトYelpでの評判も良く、実際に利用した人のコメントが多数投稿されている。

グルテンフリーレストラン紹介② Gluten Free T’s Kitchen

日本の飲食店でもグルテンフリーフードを提供する店が増えている。東京・六本木にあるGluten Free T’s Kitchenは、その名の通りグルテンフリーの料理を提供するレストランだ。小麦、大麦、ライ麦をまったく使わない料理や飲み物を提供している。グルテンフリーの餃子、春巻き、天ぷら、ラーメン、カレー、スパゲティ、焼きそば、お好み焼きなどの、一般的には小麦粉で作られる様々な料理が楽しめる。

口コミサイトTripAdvisorには、同店を実際に利用した外国人客の書き込みが多数投稿されている。「ずっと食べたかった日本のお好み焼きを実際に楽しむことができた」「小麦粉アレルギーを患っているけれど、心配することなく様々な料理を味わうことができた」「セリアック病を患っているすべての人におすすめです。色々な料理が楽しめて最高です」といった喜びの声で溢れている。

「フレキシタリアン」と「プラント・ベースド・フード」という飲食業界のニュートレンド

日本の現状と今後

諸説あるが、日本のセリアック病の有病率は0.05%程度とされ、欧米ほど高くないとされる。しかし、食生活の欧米化により、セリアック病に罹る日本人が増加する可能性が示唆されているという。また、健康や美容効果を狙ってグルテンフリーダイエットを実践する人が増えているのは間違いなく、グルテンフリーは今後、日本の飲食店が無視できないキーワードになるのは間違いないだろう。

コロナのパンデミックに収束の兆しは見えないものの、それへ向けた機運は高まりつつある。日本でも外国人観光客の入国再開へ向けた動きが始まっているが、コロナ終息後にインバウンド客が再び増加に転じれば、グルテンフリーは大きな訴求要素となる。仮にコロナ前の水準である年間訪日客数3188万人の水準に戻したとすると、最低でも48万人のインバウンド客がグルテンフリー飲食店の「ロイヤルカスタマー」になる可能性がある。インバウンドの世界でも、グルテンフリーは無視できないキーワードになるだろう

 

参考URL:
https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/nutrition-and-healthy-eating/in-depth/gluten-free-diet/art-20048530
https://www.niddk.nih.gov/health-information/digestive-diseases/celiac-disease/definition-facts
https://glutenfreemall.com/
https://medicalnote.jp/contents/171018-003-XD